ホルモン大使とオバリアン侍従

「ホルモン大使とオバリアン侍従」その5

暑いねぇ、このごろじゃ冷房の無いところなんか行きたくないな

先生さ、俺だってそりゃ涼しいところが良いってものよ、だけどさ先生も好きな焼き鳥やらホルモン焼きなんてやってたら焼くとこ涼しくしたら旨くねーってもんだ

大将良いこと言うねぇ、その通りだよ、この前な七輪で焼肉するってお店へ行ったのよ、そこはな若い女性に人気でさ、空いてる席が道路べりのところしかなかったのさ、それで、窓はフルオープンでおまけに現場で使うみたいな扇風機が付いてて外の空気を否応なしに運んでくるのだよ、目の前の七輪の炭は真っ赤だし、隣の親父らは渋団扇あおぎながら食べてたけど、そりゃこんな中で食べる焼肉はうまいったらありゃしない

オイ、この暑いのに冷房がない?

それで、今日はどうするかね

ウン、こりゃ生ビールだね

あいよ、それとこの前言ってた日本酒入れといたぜ

オー、後でいただくよ

ウー、この凍りそうなジョッキがいいねぇ、夏はこれだ、おー、ビールがシャリシャリしてるぜ

ウワァやっぱり居たぁ

来たかタヌキ、なんか探し物するみたいな言い方だね

なにヨ、タヌキじゃないって、今日はさ大使が知らないこと教えてあげようと思ってさ、こうして暑いなか脳みそからこぼれないように頭をずっと両手で支えてきたのよ

大将、あたしもビールちょうだい、うーんと冷たくなったやつ

で、教えてくれることって何だい

ちょっと待ってよ、ビール飲んだら忘れちゃったでしょ

大将、さっきのお酒は何がある

おう、冷蔵庫に入れておいたけどどれでもいいぜ

いやぁ、いい酒があるね、この黄色のラベルの「たかちよ・とこなつむすめ」なんかピッタリじゃないか

そぉよ、こりゃ先生が食いつくかと思って取っておいたやつだ、うまいぜ、わるいけど俺がちょっぴり飲んじゃった

もぉぉ何よ、とこなつむすめなんて、またなんか想像してるでしょ

おぉ、そうだった教えてくれるって思い出したか

あんた大使、あたし侍従だからってバカにしないでよ、さっきさ午後のワイドショー見てたのよ、そしたらオキシトシンってやってたの、ホルモンよ、コレ今日のワイドショーで言ってたくらいだからきっと大使は知らないだろうなって教えてあげようとしたのよ

侍従よ、オキシトシンはな本当はオキシトォシンって言うんだ

またウッセイうんちくだなぁ、そんなの良いからほんとに知ってるの?あたしがせっかく教えてあげようって思ってたのにぃ

オキシトシンはな、ほら君が娘さんを産む時なかなか生まれないって点滴しただろう、もう忘れちゃったかもしれんけどな

憶えてるって、当たり前じゃない母親はみんな憶えてるのよ、それであれがオキシトォシンなのぉ、そんな前からオキシトシンてあったのね

そうよオキシトシンはな、もう120年くらい前から子宮の収縮作用がある物質って分っていたのだ、それでそのホルモンの細かいことはそれから40年か50年くらいしてからはっきりさせた人がいてノーベル賞を貰ったんだ、僕だってその頃いたらきっとノーベル賞だったかも知らん

あり得ないでしょ、あんたがノーベル賞ぉ、せいぜいノーメルデ賞よ

エッ、それって古すぎるぜ、でな、ここが重要だ、このオキシトシンには子宮収縮作用だけでなく、授乳の際にも分泌されて母乳の分泌に大きな作用を与えるのだ、それだけじゃないぞ、このホルモンは感情とか気分とかに大きな影響を与えるのだよ、その研究も今やどんどん進んでいるけど、一定の方向性が見出されていない

でもさ、ワイドショーではオキシトシンが精神的にも良い作用して幸せホルモンだって、なんか鼻から花粉症の薬みたいにシュッてやるといいみたい

そう、オキシトシンはな色んな作用を持っているけどそれは生物学的に多くは良い方向に現れる、一番はやっぱり感情だな、幸せになるのだ、そうだ子供の頃縁の下で子供何匹も生んだ野良犬がさ、ごろっとして子犬たちにお乳あげてる時なんかじーっと目を閉じて棒で突ついても起きなかったぜ、今にして思えばオキシトシンだな

えぇぇ、子供の頃そんなことしたのぉ、バッカみたい

それにな近頃注目されるのは記憶だな、記憶が良くなるぞ、君でもお産の時の事や赤ちゃんの体重、生まれた時のことしっかり覚えているだろ、これってオキシトシンのせいじゃないかって思ってるのだ

へぇ、あたしゃ今オキシトシンが欲しいなぁ、ねぇ、ねぇどうしたらオキシトシンが出るの

そりゃな、一番の方策はスキンシップだな、動物だって撫でられた時うっとりするだろ

そっかぁ、それじゃ誰かにハグしてもらうしかないかなぁ

「ムム・・・・・・」

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