寄り道は時々

浮世絵を訪ねて(5)

浮世絵を訪ねて(5)

東海道五十三次の難所に日坂小夜の中山峠があります。あの夜泣き石の伝説で有名なところです。この峠は本当に難所です。車で行って道を間違ったら戻って来れないような急な坂道をあがってくるのです。歩いて登ったら僕らみたいな年寄り夫婦では、もう諦めるしかありません。登り切ったところに浮世絵東海道五十三次にも描かれている扇屋さんがお店を続けています。これはすごいことですね。

また、ここには西行法師の歌碑も立っています。平安時代にこの小夜の中山の峠を越えたのですね。「年たけてまた越ゆべしとおもいきや命なりけりさやの中山」とあります。この峠では芭蕉も「命なりわづかの笠の下涼み」と残しています。夏の旅だったそうですから暑かったでしょう。

今回は、日曜日に時々出かける菊川市の星乃珈琲屋でモーニングを摂って、以前から気になっていた夢灯美術館を訪れましたけど、幸いと言うか誰も居ません。入場料だって近くにいた方が400円ですよと教えてくれたから二人で800円払って入館したところ館長さんから直々に説明を受けることになりました。夢灯館長さんが浮世絵に出会ったのは22才、もう私達と同じくらいの年齢ですから50年以上浮世絵のコレクションをしているわけです。おそらく個人収集家としては日本一の所蔵品を有している美術館になります。

しかも、立地している場所が歌川広重が、五十三次日坂を描いたまさにその位置に建っているのです。一通り説明が済んでから「コーヒーはいかがですか」とおっしゃるので、デッキで心地良い風に当たりながらまた浮世絵談義していたら優に3時間ほどは過ぎています。館長のお話と本物の時間、こんな時間をきっと憧れていたんだなと気づかされた日でした。

関連記事