詩集

年輪

人は生き様や積み重ねた人生を年輪に比喩していく

それは生命を維持し丸みを帯びた幹を成長させ

その地に幾らかの恩恵をもたらしていたからだ

その年輪に人は自身の生きてきたことを重ねて思う

だけどどうだ

ある時切られたソメイヨシノをみた

今切られた株に生きてきた称賛がそこには無いのだ

もう直ぐ100年になろうかと言うまで季節には花を咲かせ

訪う人々に幸せをもたらしてきたのは力の限りだった

根幹たる年輪は崩れ病んだ空洞がぽっかりと黒く口を開けているではないか

先ほどまで艶やかに明るく花を咲かせていたと賛美されても

己が自身の幹はボロボロですよと伝える術もなく衰えていく

そして病の身の命を絶たれたかのように中心の空洞を晒すのだ

年輪は美しい言葉ばかりで語られるのではない

年輪を重ねるなんて話は嘘だ

いっ時盛んな花を咲かせた桜が年輪の芯を腐らせていく

歳を経た人生なんてそんなものだ

朽ちたものは何だ ただ年輪は歪みボロボロの芯を残していくのだ

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