職員住宅の隣にある手つかずのままの林は、屹立として住宅との境目をなしていた。
ナチュラルであったことと刈り取られ人造物に代わっていく境界は、怒涛の自然が領地を取り戻そうとする場所でもあった。
夜になるとその勢いは正体を増々増して人造物を攻撃してくるのだ。
ある時はカブトムシが大群で住宅地の街燈めがけて飛来しては明かりに体当たりしていた。
明け方には大方の勝負はついて、動けなくなった虫たちは子供たちの餌食になっていった。
その夜、職員住宅は雷鳴がとどろき、際の見えぬくらいの雨に包まれていた。
稲妻と雷鳴のなか、刈り取られた林と人造物とで合成された平野は、エクスポネンシャル的スピードで変わっていくのだと思えた。