詩集

雪風

空から見ればうっそうとした松林だけが大地を占めているような土地に、忽然と現れた白い伽藍のような大規模な建物があった。

栃木県に新設された自治医科大学はへき地医療を担う医師たちの養成を目的として新設された医科大学である。

此処へ大学病院が始まると同時に産婦人科医として赴任した。

窓から見える景色は一面の林で、眼を凝らしてみても緑色の一片もない木々のある中に枯れ葉が時折宙にフルスピードで横切っていく様は、花を秋の恵みを駆逐し、これから厳しい寒さと冷たい風が吹きすさぶ季節を疑う余地さえなく表現していた。

ああ、この先雪風荒ぶ季節の中で鉛筆の色が濃くなるように人生を色濃く書き綴ることになるのだろうか。

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