開いたページには、もうすでに見覚えのない情景が並んでいる。長い時間の経過はきっと何かを失くして過ぎてきたのだ。
失くしてきたものはもう何かは分類できないところまで来てしまっている。
ある時、雑草のない乾いた土手を降りて季節の魚をとった。ふと、このまま深い水の底に沈んでしまったらどうだろうという感覚に襲われた。
釣り竿は手を離れ、底まで見える透明さの下で見上げた太陽が白い輝きから赤く色を変える頃までは、川の命と同一になれた感覚があった。
川はゆっくりと流れてもう取り戻すことのできない時間を飲み込んでしまった。