散文詩と随筆

あかい粒

乾いた土の中で

あかい小さな粒は自分の殻を硬くしているほかはなかった

何時か地底の底から糸筋の水脈が上がって来るまで

ふんかするさまの熱流はもう求めるものではなくなった

乾いた土の中で

あかい小さな粒は自分の上下が分からないままいるほかはなかった

何時か水の流れがあって殻に小さな裂け目ができるまで

ほとばしる奔流はもう求めるものではなくなった

乾いた土の中で

あかい小さな粒は自分の形を知らないままでいるほかはなかった

何時か風が土の表を吹き飛ばして硬い殻のまま陽にあたるまで

ふくよかな大地に自分を運ぶ風はもう求めるものではなくなった

関連記事