医者のぶらぶら日記

ブルースを聞きに、

東海道新幹線新横浜駅は、既に発展した都会の雰囲気に包まれていた。

昨年の12月28日、新井英一さんのライブが行われることを知って、30年ぶりに会いに行った。

思えば、ついこのごろまで時間をとってライブに出かけることなんか考えたことも無い人生だったけど、ふと、かつて感動した歌手の声を聞きたくなったのだ。

落ち込んでいたのかも知れない、幾つかのことが懐疑的で自信を無くしていたのかも知れない。

30年前は、全てに挑戦的で自身には可能な課題ばかりだと思っていた。

新井英一さんは、確実に30年前から年齢を重ねていた。30年前に感動したブルースの歌声は確実に今の年齢と当時の年齢が重なっている以外には同じ感性を持って聞こえていた。

彼の人生のエピソードをいつかの時も聞いていたし、今でも同じ感動を持って聞けると言うより時間が水に落ちた一滴の墨汁が次第に濃淡になって広がっていく様を見るような気がした。

幾つかのブルースを聞き、自然に体を小刻みにリズムしている時、シャングリラを歌ってくれた。

30年経って聞いたシャングリラは、つい数日前に友に旅立たれた自分には体を震わせないまま目頭を涙で溢れさせるのだった。

1.

一人の男がある日突然旅立った

サヨナラの言葉さえ誰にも告げず

行く先はきっと遠い見た事もない街

虹の彼方シャングリラまぼろしの国か

夢をこの手につかむ事が俺のすべてだと

ボロボロになるまで走りつづけた

まるでオオカミかノラ犬のギラギラした目で

うすよごれた都会の水を飲んでた

流れの花は虹の彼方へ

大空高く舞い上がる

2.

男がこの世にたったひとつのこしたものは

悲しみこらえる妻とまだ幼い子洪

父さんみたいにお前も強く生きなさいと

涙こらえ母親は空を見上げた

都会の空にもいくつかの星は輝く

恋しい人の面影を映すように

花びらは今宵かぎりと咲きみだれて

せめてひとときのやすらぎを与えてちりゆく

流れの花は虹の彼方へ

大空高く舞い上がる

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