水たまり、って見なくなりましたね。子供の頃の通学路の雨上がりには水たまりがいっぱいあって、中にはアメンボが数匹浮かんでいたりしたものです。
今では、山の中で車一台がやっと通れるくらいの、林野庁の森林管理局の黄色い車くらいしか行違うことのない峠道でも舗装されています。
今の子供たちは、水たまりなんて見たことがないのかも知れません。
とにかく、日本の道路舗装率はすごいものです。
水たまりは、もちろん土色に濁っていて底は見えません。風のない朝には、雨上がりの空を映してアメンボの走る小さな波が、水たまりの空をわずかにゆがめたりして、しばらくは見とれて、学校へ遅刻することなんか、もう、すっかり忘れてしまったりしたものでした。
そんな水たまりを眺めていると、この水たまりに足を踏み入れたらどうなってしまうのだろう、不思議の国のアリスみたいに地底の国に続いていってしまうのだろうか、なんて空想が湧いてきて、怖さと興味が、ない交ぜになった時間が過ぎていきました。
翌日、通学路はすっかり乾いて、昨日の水たまりは、もう、どこにあったのかさえ分からなくなっています。
誰でも、一度は不思議の国のアリスのことを聞いたり、読んだりしたことがあるでしょう。不思議の国のアリスは、ある時、ウサギの穴に飛び込んで地底の国に入ってしまうのです。小学校入学頃には、不思議の国のアリスの物語に出会うでしょうから、きっとアリスのことを思い浮かべていたのかも知れません。
雨上がりの水たまりと雨上がりのほのかな香り、懐かしいけど、もうそんな道を通ることや見ることもないでしょうね。
不思議の国のアリスの物語には、この物語の内容を反映させた名前の病気があります。そのまま、不思議の国のアリス症候群と言います。見える対象が急に大きく見えたり、小さく見えたり、歪んで見えたりして、空中を浮遊しているような感覚や、自分の姿を見下ろしているような症状が現れることもある病気で、現実に目の前の物とは違って見える病気のことです。産婦人科医の僕には、詳しいことは分かりませんが、EBウイルス(エプスタイン バール ウイルス、Epstein-Barr virus)を原因とする説が有力で、小児に発症する場合は一過性で、ほとんどの場合、長く症状が続くことはないとのことです。
このEBウイルスは、子供の頃にほとんどの方に感染し、成人までにはほぼ全員が感染します。多くは無症状か軽い風邪症状程度で経過するとのことですが、この不思議の国のアリス症候群を経験された方もいるのかも知れませんね。
さて、アスファルトに溜まった雨水は、もはや水たまりとは言えず、あの頃の光景は無くなり、遠く聞こえていた雨降りの歌さえ聞くことはなくなりました。
あめふりは、北原白秋 作詞、 中山晋平 作曲の懐かしい唱歌です。
あめあめ ふれふれ かあさんが じゃのめで おむかえ うれしいな ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン
かけましょ かばんを かあさんの あとから ゆこゆこ かねがなる ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン
あらあら あのこは ずぶぬれだ やなぎの ねかたで ないている ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン
かあさん ぼくのを かしましょか きみきみ このかさ さしたまえ ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン
ぼくなら いいんだ かあさんの おおきな じゃのめに はいってく ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン