ホルモン大使とオバリアン侍従

「ホルモン大使とオバリアン侍従」その7

こんばんは、いつまでも暑いですなぁ、おや、こんばんは、今日は早くからご出勤ですな

なにヨ、その勿体ぶった言い方、もっとポンポン言いなよ、どうしたのよ

いやいや、これは失礼いたしましたな、オバリアン侍従殿

ほんとなにそれ、大体ね、女性に向かって殿は無いでしょ、殿なんて言い方って男が威張ってた時代の名残よぉ、そんなん年寄りの大使にだって問題よ

オバリアン侍従様、今宵はワインなど嗜まれていかがいたしましたかな

だから、バカじゃないって言うの、大体が殿を様に変えたって意味ないのよ、あんたのその言い方がおかしいっての

そっか、実はさ、この前ね、紳士のお話を読んだのよ、で、僕さずっと紳士と縁遠い生活して来たでしょ、どう言ったって紳士とは呼ばれることなんか人生で一回だって無かった

あったり前じゃない、大使のこと誰が紳士なんて思うのよ、紳士は生き方で決まるのよ

だからさ、心を入れ代えて紳士になろうと思ったのよ、まず紳士は話し方が違うのよね、それで話し方だけでも紳士になって行こうかと努力しているのさ

ムリ無理、あんたさ、今から紳士になれるわけないからさ、今までで良いのよ、どうせこれから先も紳士の場面をみてもらう事なんてないじゃない

大将さ、ワインを入れるようにしたのかい

オウよ、この間さここには不釣り合いのそれ紳士がさ、このお店が美味しいって聞いたのでって来たけどワインは無いって言ったら、じゃまたって帰って行ったのよ、今度ご用意しておきますからって言ったけどそれから来ないんだ、ご用意なんてつられて言っちゃったけど、オウ今度は良いの取っとくぜって何時もみたいに言っときゃよかったぜ

そうか、僕にも一つくれや

あいよ、あいにくワイングラスってやつが試しの一つしか無いんだ、コップで良いかい

オー、いいワインだね、高かったろう

それがね、ホラ知り合いの赤い鳥のバーのマスターに教えてもらって、イタリアのワインだってさ、このラベル見りゃどうしたってイタリアだろう、俺にも分かるぜ

ところで侍従よ、ワインときたら乾杯だ、Cin Cinは止めとくか、サルーテだ

そうそう、あたし定期的に昼酒の会やってるでしょ、このあいだそのメンバーから、また聞いて来てッて頼まれたんだけど、それね女子会仲間のお孫ちゃんだけど、お孫ちゃんって言ってももう高校3年生よ、その子がさ生理が不順だからって産婦人科の先生のとこ行ったんだって、心配だからおばぁちゃまも一緒に行って聞いてきたの、そしたらさ、まだもう少し待ってたら良いんじゃないって言われたのよ

そっか、月経不順って言ってもね、いろいろあるな、月経ってのはねほぼ一定の周期を持つ子宮からの出血でな、ぴったり同じ日に来るってわけでも無くてさ25日から38日の間にあれば良いんだ、で、その時々で6日間くらいのずれは気にしないぞ、ただしな、月経は量とか出血している日数はほぼ同じだぞ、基本、前もって排卵がある、ちょっとした出血や何時もの時より多いなんてのは不正子宮出血かも知らん、出血があったら月経だって言うのも間違いのことが多いぞ

それでね、あたしだってオバリアン侍従でしょ、しょっちゅうあんたからいろいろ聞くからさ、その生理が止まっちゃてるってことで、たまにちょっと出血したことがあるらしいのよ、良く言うじゃないダイエットすると生理に影響するって、この前だってアンタ言ってたじゃないの、それで聞いてみたけどダイエットどころじゃなくて良く食べるし、体重だって多めよ、そのお母さんがさ、妊娠してんじゃないかって妊娠反応見させたけど陰性だったって

フーン、良く聞いたねぇ、さすがオバリアン侍従だな、それさ、若い人にも良くある多嚢胞性卵巣症候群を疑うな

なにそれ

それがな、若い人の10人に1人くらいがその多嚢胞性卵巣症候群を診断されるんだ、多嚢胞というくらいだからな、卵巣に小さな嚢胞つまり水のたまった小さな丸い袋、小さな卵胞だな、それがたくさん並んで見える状態だ、でもお腹からエコー診ても良く分からないことがある、それにな、初潮になって8年くらいは多嚢胞に見えることがある、まあ、ホルモン検査見てさ、近頃ではエコーで卵巣が良く見えない時はAMHってホルモンを検査すると良い、多嚢胞性卵巣があると排卵が障害されて月経不順になったり、月経が止まってしまうことが多い、それに女性としては男性ホルモン分泌が多めになることもこの卵巣の特徴だ、体重が増えたり、糖尿病体質になったり、中には精神状態も影響されることがある

えぇー、いろいろ難しいじゃないの、覚えきれないでしょ、何よそのエーエムエッチって、あたしの乗ってるベンツのエーエムジーなら分かるけど

そりゃな俺っちは伝統的にアーマーゲーって言うんだろうよ、

ねぇねぇ、将来さ子供が欲しいってことになったらどうすんの、

排卵が起こらないから排卵を促進することが第一だな、この多嚢胞性卵巣は個々に病態が違うからな、その方に合わせて治療方針を積み重ねていくことになる、治療という面では最もオーダーメイド治療を要求されることになるぞ、だけどその前に将来子宮体癌などの子宮の病気の元にならないように月経を定期的に起こしていくことが大切だ、とにかくさ、一度ウチの息子たちのクリニックへ行って検査受けてもらいなよ、その結果でホルモン療法を選択したり、生活指導も受けなきゃならん

そうよね、早速言っておくわ、でもさ、卵巣って複雑で大変よね、あたしオバリアン侍従で良かったわぁ、こうなりゃずっとオバリアン侍従でいようかな

そっか、じゃホルモン大使も頑張るかねぇ

そっちは良いんじゃない、どうせ役に立たないし

うぅ、、

  • 多嚢胞性卵巣:卵巣の形態から名付けられた。卵巣に数ミリサイズの嚢胞(卵胞)が多発性に存在して排卵障害を生じ、その結果月経不順を発症する。現在では超音波検査だけでなくホルモン検査を主体に診断が行われる。
  • AMH:抗ミュラー管ホルモン、卵巣機能の予備能検査に用いられるが、多嚢胞性卵巣では小卵胞が多発するため高値になる。

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