ホルモン大使とオバリアン侍従

声とホルモン

おぅ、先生久しぶりじゃないか、どっか黙って夜逃げしたんじゃないかって思ってたぜ

なぁに、チットばかり閉じこもっていただけよ、暑けりゃ外なんて出たくないからね

そりゃそぉと久しぶりに夏酒かい、良いのとっておいたぜ

早速頂こうぜ、あぁ金魚が良いねぇ、この丸い金魚鉢に赤い和金ってのが最高だね、いまどきゃ金魚も空気をブクブクさせてる四角なガラス箱に入れられてるからな、風情もないなぁ。

先生ヨ、これおすすめだぜ、甲子アップル、って言っても純米吟醸だぜ、俺一口飲んでみたけど、ほんと林檎だぜ

えぇぇ、大使生きてたぁ、

なんだ、そりゃこっちが言いたいね、

ごめんね、あれから診察にも行かないで、あんた引っ込んでるから今じゃ時々息子さんの方にかかっているの

そうか、そうしてくれ

でさ、最近気が付いたけど

また、問題抱えてきたか

そうじゃないのよ、わたしって美声でしょ、ソプラノよソプラノ!

ソプラノって言ったって音痴じゃしょうがないだろう

おっ、大将、しょうがないついでにハジカミいくつか出してくれ

あいよ、味噌で良いかい

音痴じゃないもん、こないだだってカラオケで93点よ、でもさふつう年取ると声が出なくなるって言うじゃない、わたし歌手になっておけばよかった

ムムム

*以下に声とホルモンについての論文(Effect of sex hormones on human voice physiology: from childhood to senescence Review Article Published: 28 May 2021 Volume 20, pages 691–696 2021)を要約してみました。閉経後の女性では脂肪が女性ホルモンの維持に大切なことも示唆されています。

『ホルモンと声』

声はヒトの有する機能の中でも最も複雑で精巧に発達したものの一つであり、社会的コミュニケーションだけでなく、自己認識や性自認にも不可欠です。

声は肺、声帯、声道の相互作用によって生まれます。機能的には肺が声の力を担い、声帯(発振器)が音源として働き、声道が能動共鳴器として機能します。

ホルモンは声器官に大きな影響を与え、喉頭自体と声道の構造の両方に影響を与えます。

・声の生理学の要素

発声器官は、呼吸器、声帯、声道の3つの異なるシステムで構成されています。声帯は、筋肉(声帯筋)、靭帯(声帯)、粘膜の被覆からなる多層構造です。声帯間の平面的な隙間は声門と呼ばれます。声道(または声共鳴器)は、喉頭前庭、咽下部、中咽頭、口腔、鼻咽頭、鼻腔からなる解剖学的空間です。呼吸器系、声帯、声道が協調して声の生成、すなわち発声を生み出します。

・幼少期

出生時、人間の喉頭は成人の喉頭の約3分の1の大きさです。成人の身長や胸囲と比較してみても3分の1の大きさはほぼ成人の機能に匹敵する大きさの発声器を持っていることになります。

乳児の喉頭の位置は高く、喉頭蓋は軟口蓋の後ろに留まり、新生児は授乳と呼吸を同時に行うことが可能となっています。成長につれて喉頭は徐々に下降します。

ミニ思春期という時期があります。男児は生後6か月以内に、女児は生後1‐2年ほどで男子では男性ホルモン、女児では女性ホルモンが一時的に大量に分泌されるため、ミニ思春期と呼ばれる時期があります。このことはその後の男女の発達の差異にも表れてきて、明確な泣きかたの性別差や、早期言語発達における女性の一貫した優位性を説明することが出来ると示唆されています。

・思春期

思春期は人生の重要な時期であり、その期間に劇的な生理学的・心理的変化が起こります。

思春期には、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が、脳下垂体からの卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモン分泌促進を担い、それぞれ精巣と卵巣の男性ホルモンおよび女性ホルモンの産生を促進します。そのため思春期における最初の生理的変化は二次性徴の出現です。

思春期には発声器官も性別による大きな変化が起こり、喉頭、声道、声帯の拡大と延長が見られます。男性は女性よりも劇的な変化を経験し、最終的に平均声帯長が1.6cm、平均声道長が16.9cmとなり、女性は平均声帯長が1.0cm、平均声道長が14.1cmとなります。この違いは、思春期に起こる男性特有の二次的特徴である喉頭の降下によって説明でき、男性ホルモンが増加する結果、男性の声帯の顕著な伸長と肥厚が生じます。

機能的には、思春期に声の変異が起こります。突然、男性の声の高さ(F0:基本周波数)は約1オクターブ下がり、女性の声のF0は約3〜4半音下がり、声域の並行変化が観察されます。

・月経周期

月経周期は、特に女性ホルモンと黄体ホルモンなどの性ホルモンの増減によって調整されます。

女性ホルモン濃度は卵胞期(月経開始7日目〜13日目)に上昇し、排卵期(月経開始13〜15日目)に最も高い値が観察されます。黄体ホルモン(排卵後の卵巣黄体から分泌される)値は排卵後に上昇し、月経前(月経開始後15日目から28日目)に減少します。

月経周期のさまざまな段階で、さまざまな声の変化が報告されています。一部の研究者は、女性ホルモンが最も高いレベルに達する排卵期に最も良い声質が観察されると示唆しています。これは、女性ホルモンが声帯の上下の腺細胞による粘液分泌を促進し、粘膜の粘度を改善することによると考えられ、さらに、高い女性ホルモンレベルは声帯の血管や毛細血管の透過性(血管内の成分が血管壁を通過しやすくなる)も改善し、その結果として組織の酸素供給が改善されることによります。 一方で、女性は月経になる前の段階で発声障害の症状を訴えることが多いとされ、発声効率の低下、柔軟性の低下、息切れ、疲労感、高音の喪失、かすれ声、音程の問題、こもった声などは、月経前発声障害とされています。

説明されている声の障害は、女性歌手などのプロの声楽者の間でより深刻であり、歌手は月経前期間に大きな声の苦痛を経験することがあるため、かつて多くのヨーロッパのオペラハウスでは、声帯の損傷を避けるために、月経前に歌う予定の出演者に対して猶予期間を提供していました。

月経前発声障害は、性ホルモンが声帯を含む発声組織に直接作用することによるものとの仮説があります。これは女性喉頭の上皮細胞の変化と膣子宮頸部の上皮細胞の変化との間に有意な類似性が観察され、ヒトの声帯に性ホルモン受容体(ホルモンが作用する場所)が存在することが確認されています。

最近の研究では、月経周期の異なる段階すなわち月経周期の初期(低黄体ホルモンレベル)と月経前段階(高黄体ホルモンレベル)における女性の声帯の解剖学的および機能的特徴が分析されました。その結果、音響解析、自己評価、声帯振動の質に有意な差は見られませんでしたが、喉頭の微小血管パターンに有意な変化が観察され、月経前の喉頭うっ血が増加したため、月経周期中の黄体ホルモンレベルの変動が喉頭の血管に影響を及ぼしている可能性が示唆されています。

黄体ホルモンはまた、上皮の剥離性を増加させ、声帯の上下の粘液分泌を減少させることで粘膜乾燥を引き起こすこともよく知られています。これらの要素すべてが、月経前の一部の女性の声質の変動を説明する可能性があります。

・妊娠期、省略、

・老年期・老化

男性も女性も、エイジングの過程で声の変化を経験します。加齢に伴う声の変化(加齢性発声障害とも呼ばれる)は、加齢に伴う声障害を指し、呼吸器系、声道、声帯の加齢に伴う解剖学的変化と関連しています。

声帯老化はホルモン系に関連した男女別の老化パターンが、男性と女性の声帯老化過程の違いについて説明できる可能性があります。閉経後、女性は女性ホルモンレベルが急激かつ劇的に低下し、男性ホルモンレベルが相対的に増加します(女性にもわずかに男性ホルモンがあり、男性にもわずかに女性ホルモンがある)。対照的に、男性は男性ホルモンが徐々に減少し、その結果として女性ホルモン/男性ホルモン比率が相対的に増加します。

性ホルモン受容体が声帯に存在するため、老化期の性ホルモンレベルの変化が高齢者の声の男女差の変化に重要な役割を果たすとの仮説があります。

女性の声に関しては、声の強度低下、声の疲労、音域の低下、高音の喪失、話す声や歌う声の音色の喪失を特徴とする更年期声楽症候群があること、その症状は、閉経後に喉頭に影響を及ぼす形態的変化、例えば声帯の肥厚、声帯浮腫、声帯の突出性の増加によるとされています。声帯の厚みは、高齢女性における声門閉鎖の増加と後部声門隙の減少を説明できる可能性があり、その結果、閉経後の女性では、若い女性と比べて声帯の息漏れの減少が観察されています。閉経後のもう一つの典型的な声の変化は、F0の低音化、より深い声のトーン、そして声の音色の男性化です。このような変化は、閉経後に男性ホルモンレベルが相対的に増加することによる声帯の厚みの結果です。一方で、閉経後は女性がさまざまなF0の変化を経験することがあります。

閉経後の女性における女性ホルモン産生の主な源は脂肪組織であるため、閉経後の体格指数(BMI)が高いことはF0の上昇と相関しています。

男性に関しては、加齢とともに声帯が徐々に薄くなることが観察されます。30歳以降は血清男性ホルモンのレベルが年間1%ずつ低下します。男性ホルモン値の進行性低下は、65歳以上の高齢男性における筋肉量減少症の原因となり、声帯筋にも影響を及ぼします。その結果、声帯が内側にたわみ中央が真っすぐに閉まらない(加齢性声帯萎縮、声帯閉鎖不全)状態となり、声門との接触が減少し、若い男性よりも高齢男性の声では息漏れが強く感じられます。さらに、男性の高齢期にはF0の増加が観察され、声の女性化や声のトーンがより澄んだりすることがあります。

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